nettpappan
 

夜のパパ

マリア・グリーぺ作 偕成社

 なにかとってもうれしいこいとや悲しいことがあって頭がいっぱいなのに、
 それを人におしゃべりする気がしないときは、かわりに書けばいいんじゃないかしら。(中略)
 この本は夜書くの。
 みんなが寝ている静かな夜、あたしがもう寝てしまったと<夜のパパ>も思っていて、石の本を読んだり、書きものをしたり、音楽をきいたりしているとき、暗い夜空に星が光っているとき、あたしは書くの。
(本文より)

 

 本の見返しにある紹介によると『夜だけるすばんにくる青年と、一人っ子ユリアとのあいだにかわされる対話をとおして、するどい感受性を持つ一人の少女の内面を詩情ゆたかに書いた作品』」だそうだ。他に説明のしようがないのだけど、あまり子供が読みたくなるような紹介じゃないような。でも中身は本当にいい。
 一つの世界、空気を堪能できる本当に綺麗な物語。とにかく、言葉が美しい。
 母子家庭の子供ユリアとその看護婦の母親が夜、仕事でいない間の留守番として雇われた青年が、交代で文章を書く形で、物語は進む。大きな事件が起こるわけでもなく(まあ、スムッゲルが逃げ出したのは、事件かもしれないけれど)、ここに書かれているのは、ユリアと<夜のパパ>がなにを見て、なにを考えているかだけだ。
 話のほとんどが、夜のパパのやって来る夜に展開されている。その静かで、穏やかな雰囲気のなかで、ユリアと言う少女の姿がくっきり浮かび上がってくる。
 ユリアは父親がいないと言うことで、友達からいじわるされたりしているのだけど、それを作者は不必要に劇的にかこうとはしない。ユリアの悩みは日常のなかの一部でしかない。グリーペの作品に出てくる子供は皆、子供であるということに正直で、公正だ。その抑えた書き方が、この作品の『詩情』を甘ったるいものにせず、本物の、美しい世界を創っているのだとおもう。良いものだけでなく、悪いもの、理不尽なものを受け止めてその中で生きていこうとする姿が今も新鮮。大人が読んでも十分に面白い作品だし、大人の方が理解できることは多いと思うのだけど、今のローティーンの子供にも読んで欲しい。きっと、すくわれる部分があるはずだから。
 残念ながら、今では絶版になっているようだけれど、図書館でリクエストすればまだ読めます。開架ではなく、書庫の方にあることが多いので、検索してみて下さい。こんないい本が、なんで絶版になっちゃうんだろう。八王子市、仙台市、神戸市、広島市の図書館なら現在も読めるはずです。
 そしてもし、面白い、読んでみたいと思っていただけたのならこちらの復刊運動にも御協力下さると嬉しいです。
絶版本を投票で復刊!  こちらをクリックして投票。ユーザー登録が必要で少し面倒かも知れませんが、その後は結果を逐一メールで報告してくれたりもします。あと、掲示板が活発なので、グリーペについて語りたい方はどうぞ。

 私も実は、図書館で借りたので持ってないんですが、欲しいです。見かけた方、御一報を。

2001年2月3日(2003年4月20日加筆)

 

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